永久劣後債とは?
永久劣後債とは、一般債務よりも元利金の支払順位が低く、償還期限が定められていない債券のことです。支払順位は「債務弁済順位」とも呼ばれます。
また劣後債とは、企業(以下、発行体という)が発行する社債のうち、倒産・解散時における弁済順位が低いものを指します。普通社債は、発行体が破たんしない限り償還までは一定の利子がつき、償還期限を迎えると元本が払い戻しされます。
しかし劣後債は、発行体が破綻したときの弁済順位が低いため、普通社債と比較すると高い利回りに設定されています。つまり、普通社債よりもリスクが大きい劣後債は、そのぶんリターンも大きいということです。
劣後債について詳しく知りたい方は「劣後債とは?メリットやリスク、銀行などの発行体についてもわかりやすく解説!」も参考にしてください。
https://hedgefund-direct.net/column-test/subordinated-debt/
永久劣後債と期限付劣後債との違い
劣後債は期限付劣後債と永久劣後債の2つに分類され、償還期限が定められているかどうかが異なります。ここでは、2つの違いについて詳しく説明します。
弁済順位
永久劣後債は、発行体が倒産した際の元利金の弁済順位が低いです。また、償還期限が定められていないという特徴を持っています。
一方で期限付劣後債は、発行体が破綻しない限り、普通の社債と同じように償還までは一定の利子が付きます。また、償還期限を迎えると元本が払い戻しされます。そのため期限付劣後債の方が、償還期限の定めがない永久劣後債よりも弁済順位が高いです。
リスクやリターン
永久劣後債は期限付劣後債に比べ、リスクは高いですが高いリターンが期待できます。つまり永久劣後債は、発行体が破たんした場合の弁済順位が低い代わりに、利回りが高くなっています。
一方で期限付劣後債は、永久劣後債に比べて弁済順位が高い債券です。そのぶん利回りが低く設定されており、リスクは低いですが期待リターンも低くなっています。
永久劣後債を発行する発行体のメリット
永久劣後債は、銀行や保険会社をはじめとする金融機関などの事業会社が発行するパターンが多いです。
金融機関が発行する理由としては、劣後債を発行することにより、株式価値を落とすことなく自己資本を高めることができるからです。これにより発行体は、自己資本比率規制の条件をクリアできるというメリットがあります。
企業が発行する債券は、一般的には負債として扱われます。しかし永久劣後債は、資本性証券としての一面があり、ある条件を満たすことで資金調達額のうち一部を「自己資本」とすることができます。
このように永久劣後債は、発行体が自己資本を増強したい場合に発行されることがあります。
永久劣後債の利回り
先ほどもお伝えした通り、永久劣後債の利回りは、他の債券や期限付劣後債に比べて高くなっています。具体的には、2016年に銀行セクターの期限付劣後債が年率3.5%であったのに対し、同じく銀行セクターの永久劣後債は年率5.0%でした。
このように永久劣後債は、発行体が破たんした時の弁済順位が低いぶん、利回りが高く設定されています。そのため、多少のリスクを負ってでも攻めの運用がしたいという方に適した商品と言えます。
永久劣後債のリスク
永久劣後債の主なリスクとしては、劣後リスク、期限前償還リスク、価格変動リスク、信用リスクがあります。
劣後リスク
劣後リスクとは、劣後債は普通社債に比べて弁済順位が低いため、発行体が破たんした場合に元本割れの可能性があるリスクのことです。
期限前償還リスク
期限前償還リスクとは、予想の期日に「期限前償還」がされなかった場合に、劣後債の価格が大きく下落するリスクのことです。
価格変動リスク
価格変動リスクとは、市場金利の変動により、債券価格が変動するリスクのことです。
信用リスク
信用リスクとは、発行体の信用度(格付け)により債券価格が変動するリスクのことです。
また、永久劣後債債以外の金融商品についても知りたい方は「資産運用とは?運用方法や投資種類の特徴をわかりやすく解説!」も参考にしてください。
https://hedgefund-direct.net/column-test/asset-management/
代表的な永久劣後債の例「ソフトバンク」
償還期限の定めのない永久劣後債は、多くの企業で発行されています。その代表的な例として、2017年7月12日に発行された、米ドル建のソフトバンクグループの永久劣後債があります。
ここでは、2020年9月時点でのソフトバンクグループの永久劣後債についての情報を詳しく紹介します。
項目 | 数値 ※2020年9月時点 |
---|---|
初回コールまでの期間 | 6年11か月 |
初回コール日までの固定利率 | 6.875% ※以降は変動利率 |
初回コール利回り | 6.289% |
初回コールまでの期間
初回コールとは、期限前償還が可能な最初の日のことを指します。劣後債には期限前償還条項が付されているものがあり、発行者が任意に決定した時期に早期償還されることがあります。市場の慣行としては、初回コール時に償還するのが一般的です。
ソフトバンクが発行した永久劣後債は、初回コールまでの期間が6年11か月となっています。
固定利率
固定利率とは、債券を購入した時点から償還日まで金利が一定である利率のことです。一方で変動金利は、一定の基準に従って金利が変動していきます。
ソフトバンクが発行した永久劣後債は、2027年7月18日 までは固定金利が年率6.875%です。なお、その後は変動金利となっています。
初回コール利回り
初回コール利回りとは、満期日に繰上償還できる初日(初回コール日)に償還されることを前提として設定した利回りを指しています。通常では、永久劣後債には償還期限は設けられていませんが、発行体の意向によっては繰上償還されることがあります。
ソフトバンクが発行した永久劣後債の初回コール利回りは、年率6.289%となっています。
永久劣後債の購入や運用を考えている方は?
ここまで見てきた通り、永久劣後債は通常の債券と比較してリスクが高いぶん、リターンも高い商品です。また、期限前償還されることが一般的なので、計画的な資産運用もしやすいです。
一方で「利回りが高いのはいいけれど普通の債券とどこが違うのかよくわからない」と購入を悩んでいる方もいることでしょう。
そんな方は、ぜひヘッジファンドダイレクトにご相談ください。ヘッジファンドダイレクトでは、お客様が商品のことを理解できるまで丁寧にサポートしているので、納得できる資産運用を実現します。