退職金の運用や使い道はどうする?
定年退職を迎えると、ある程度まとまった金額の退職金を受け取れますよね。ではその資産を老後資金として増やすべく、退職金の運用はした方が良いのでしょうか。結論としては「自分に適した金額で」運用することが大切です。
現在、老後資金の不足についてさまざまな指摘があります。例えば「人生100年時代」と言われるように、日本人の平均寿命はどんどん延びており、私たちは人生設計の見直しを迫られています。
また、これは個人だけでなく国家的な課題にもなっています。「老後2,000万円問題」が取り上げられているように、退職後20~30年間の老後を生きるためには、年金以外で別途2,000万円の老後資金が必要になるというのです。
総務省が実施した調査によると、退職後の平均年金収入は、夫婦で月額約21万円となっているのに対し、消費支出は約27万円になるとされています。この差額分を自分たちで補填する方法の1つとして、退職金の運用が注目されています。
また日本企業では、かつてより退職金制度が浸透していましたが、令和時代に退職金を当てにして生活するのは少々リスクが高いといえます。ご自身でも資産運用について調べ、資産を守りながらも増やしていくという姿勢が求められる時代になってきています。
従来、日本の企業においては、退職金制度が長年にわたり用いられてきました。しかし、景気・運用成果の悪化により、従来の退職金制度だけでは十分に生活保障としての役割を果たせないケースが出現したのです。
この状況を鑑み、従業員の自助努力による資産形成の手段として、確定拠出年金を取り入れる企業が増えてきました。
退職金を運用する必要性に関してさらに詳しく知りたい方は「退職金は運用しないといけない?iDeCoの登場で自分で資産運用するのが前提に?」をご覧ください。
退職金のおすすめ運用方法|安全性や期待リターン、預入資金のハードルを比較!
資産運用方法 | 安全性 | 期待リターン | 預入資金のハードル |
---|---|---|---|
退職金専用の定期預金(銀行) | ◎ | △ | ◎ |
株式 | △ | ◯ | ◎ |
国債 | ◎ | △ | ◎ |
投資信託 | △ | ◯ | ◎ |
保険 | ◎ | △ | ◯ |
不動産 | △ | ◯ | △ |
ETF | ◯ | ◯ | ◎ |
ヘッジファンド | ◯ | ◎ | △ |
退職金の運用方法には上記のようなものがあり、運用方法によって「安全性」「期待リターン」「預入資金のハードル」が異なります。
安全性:投資のリスクのことです。投資リスクが低いものを◎、リスクが高いものを△で表しています。
期待リターン:期待できる収益のことです。大きな収益が見込めるものを◎、あまり収益を見込めないものを△で示しています。
預入資金のハードル:最低預入金額のことです。少額から始められるものを◎、高額な資金が必要なものを△で示しています。
それぞれの資産運用には特徴があるので、自分の資産運用の目的に応じて金融商品を選ぶようにしましょう。
例えば、安全性の高い運用をしたい方は定期預金や国債、保険が向いており、高いリターンを狙いたい方は株式や投資信託、ヘッジファンドなどが向いています。
退職金専用の定期預金(銀行)
退職金の運用で人気なのが、銀行の退職金専用の定期預金です。この定期預金は「退職金」として受け取ったり振り込まれたものでなければ契約できないという特徴があります。
そして退職金専用の定期預金は、銀行側にも多額のお金を預けてもらえるというメリットがあることから、通常の定期預金よりも高い利率が設定されています。
運用にあたっては、預け入れる金額が「退職金であること」の証明が求められます。また「退職金を受け取った日から何日以内」といった条件がある場合もあります。
サービスの内容としては一般的な定期預金ですので、元本割れのリスクがない他、万が一中途解約した場合でも利息がもらえない程度で済むので、運用商品の中では最もリスクが低い商品といえます。
ただし、中途解約については銀行によってルールが異なりますので、事前に確認しておきましょう。
安全性
銀行の退職金専用の定期預金は安全性が高いです。定期預金は金融庁が整備した預金保険制度の対象になり、万が一運用先の金融機関が経営破綻した場合でも、1,000万円までの元本と破綻日までの利息は保護されます。
利息のつく普通預金、定期預金、定期積金、掛金、元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含みます)、金融債(保護預り専用商品に限ります)などは、1金融機関ごとに合算して、 預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
期待リターン
退職金専用の定期預金は高いリターンは期待できません。通常の定期預金よりも金利は高いですが、それでも年利0.2~0.8%程度です。満期後は自動継続され、その後の金利は通常の定期預金の金利と同じ0.002%程度になります。
預入資金のハードル
退職金専用の定期預金の最低預入金額は金融機関によって異なりますが、100万円~300万円程度に設定しているケースが多いです。退職金の平均額は2017年で1,788万円なので、ほとんどの方は預入金額の条件をクリアできるでしょう。
株式投資
株式投資は、証券会社などで企業の株を購入し、株価の値動きによる売却益を狙う運用方法です。リスクが高くリターンも大きい商品ですので、リスクについて十分に理解した上で運用するようにしましょう。
また、株式投資には企業の利益に応じて配当金が支払われることがあるほか、株主優待を受けられるものもあります。日ごろから利用している施設やサービスであれば、老後の余暇として株主優待を利用して余暇を楽しむこともできます。
安全性
株式投資は元本保証がなく、安全性が高いとは言えません。株は値動きの変動幅が大きく、1日で10%以上値下がりすることもあります。また、ストップ安が続くとすぐに売却できず、多額の損失が発生することがあるので注意が必要です。
期待リターン
株式投資の期待リターンは銘柄によって異なりますが、5~9%程度の利回りは見込めます。中には短期間で価値が10倍以上になる「テンバガー(10倍株)」と呼ばれる銘柄もあり、銘柄によっては高いリターンが期待できます。
預入資金のハードル
株式投資は数万円の資金で始められます。株式投資をするには証券口座の開設が必要になりますが、一般の方でも簡単に口座開設できます。ただし、信用取引をする場合は審査があり、審査に落ちると信用取引での株式投資はできません。
国債
国債は、国が発行する債券を購入し、半年ごとに利息を受け取りながら一定期間保有する商品です。個人向け国債の期間は、固定金利の3年、5年、変動金利の10年があります。満期後は「償還」となり、普通預金口座に元本が戻ってきます。
銀行預金よりは多少高めの利率で、安定的に運用できる点がおすすめです。しかし、定期預金と違って元本が保証されている商品ではなく、国が破綻した場合や1年以内の中途解約時には元本割れになる可能性があります。
安全性
国債は元本保証ではありませんが、安全性が高い金融商品です。日本国債の信用格付けは「A1」であり、ドイツ「AAA」やアメリカ「AA+」と比べると低いですが、日本は世界最大の対外純資産国です。
資金的な裏付けがあるので、日本国債が紙切れになる可能性は、他の金融商品と比較すると極めて低いと考えられます。
期待リターン
個人向け国債の利回りは約0.09%であり、期待リターンは低いです。普通預金の金利は0.001%なのでそれと比べると高いですが、資産運用としては高い利回りであるとは言えません。
日銀はマイナス金利政策を続けており、国債の利回りが急激に上昇する可能性は極めて低く、今後も現在の利回りが継続すると考えられます。
預入資金のハードル
個人向け国債は1万円単位で購入できるので、預入資金のハードルは低いと言えるでしょう。国債の購入金額に上限はなく、退職金のほとんどを国債で運用することも可能です。
なお個人向け国債は毎月発行され、ネット銀行を利用するとインターネットで購入できます。
投資信託
投資信託は、預けたお金を投資運用会社に運用してもらう商品です。購入者は定期的な運用レポートを確認しながら、時間をかけて運用利益を得られます。
金融機関にもよりますが、多くの商品で1万円からはじめることができるので、退職金の一部を投資信託で運用するのが良いでしょう。
そして投資信託の投資先としては、世界中の株式や債券など商品によってさまざまです。株式や債券だけに投資するものもあれば、不動産やコモデティ、外国株式や先物取引など、複数の金融商品に分散して投資するものもあります。
また株式に投資する場合であっても、あらゆる会社の株式に分散投資するため、自分で1つの銘柄の株式を購入するよりはリスクを抑えることができます。
安全性
投資信託は銘柄によっては高いリスクが伴います。国内債券型投資信託はリスクは低いですが、国内株式型投資信託や外国投資信託はリスクが高いです。特に新興国投資信託はカントリーリスクや地政学的リスクがあるので注意を要します。
期待リターン
投資信託の利回りは銘柄によって異なりますが、3~9%程度の高利回りが期待できます。国内株式型投資信託や外国投資信託はリスクが高い分、高いリターンが期待でき、銘柄によっては10%を超える高利回りで運用できる場合があります。
預入資金のハードル
投資信託は、ネット銀行やネット証券だと100円から購入でき、どなたでも気軽に資産運用を始められます。投資信託は購入時に手数料がかかりますが、ネット銀行やネット証券の中には販売手数料を無料にしているところもあり、資産運用のコストを低く抑えられます。
また、退職金運用を投資信託で行うメリットやリスクなどについて知りたい方は「退職金を投資信託で運用!退職金特別プランや手数料・リスクについてを解説!」をぜひ参考にしてください。
保険
退職金の運用には、保険も活用できます。「保険」というと月払いの医療保険をイメージするかと思いますが、ここでは一時払いで保険料を支払うものをいいます。
ほとんどの商品には、一定期間(10年など)経過後からは毎年利率が上がっていくことが保証されており、払った保険料よりも大きな死亡保障がついているため、自分に万が一のことがあった場合にも遺族にお金を残すことができます。
しかし利率が上がる前に中途解約した場合、元本を大幅に下回っての返金となりますので、運用するのは余裕資金であることが前提です。
安全性
終身保険や養老保険などの貯蓄型保険は、安全性を最重視して運用する商品です。万が一保険会社が経営破綻した場合でも、生命保険契約者保護機構によって90%補償されるので、払った保険料の多くが戻ってこなくなることはありません。
期待リターン
貯蓄型保険の平均利回りは年利1~2%程度なので、大きなリターンは期待できません。
なお、変額有期保険や変額終身保険などの変額保険では積極的な運用を行うため、5~10%程度の高利回りが期待できます。ただし、変額保険はハイリスクになるので注意が必要です。
預入資金のハードル
一時払いで保険料を支払う場合、保険会社によって最低預入金額は異なりますが、200万円程度に設定しているケースが多いです。
なお、最低預入金額を公開していない保険商品もあるので、保険会社に問い合わせるなどして事前に確認しておきましょう。
不動産
不動産運用とは、土地や建物を貸し出すなどして運用することを指します。そして退職金の運用で最も一般的なのが、投資用マンションです。
マンションの一室を購入し、自分はオーナーとなって部屋を誰かに貸すという方法で、毎月の家賃収入を手に入れることができます。物件選びは慎重に行う必要がありますが、資産を持ちながら毎月収入を得られるという点でおすすめの運用方法です。
また、不動産への投資は相続税対策としても有効です。近年では相続税が上がってきていることもあり、注目度が高まっています。
安全性
不動産投資には空室リスクが伴います。例えば、立地条件が悪い物件は安全性が高いとは言えません。空室が発生すると家賃収入が確実に減少するので、空室が発生しやすい物件で不動産投資をするのは危険です。
そのため、不動産投資では立地や物件の条件を詳しく調べて、入居希望者がすぐに見つかりそうな物件を選びましょう。
期待リターン
都心部のマンションの期待利回りは3~4%程度です。地方の物件だと10%を超える利回りが期待できますが、立地面などの条件が良く空室が発生しにくい物件であることが絶対条件です。
このように不動産投資では、空室が発生しなければ、毎月安定的なリターンを得ることが可能になります。
預入資金のハードル
ワンルームマンション投資だと数百万円程度の資金で始められますが、アパートやマンションを一棟買いする場合だと数千万円以上の資金が必要になります。資金が不足する場合は、金融機関から融資を受けることが必要になってきます。
ETF
ETFとは、Exchange Traded Fundの略で、日本語では「上場投資信託」と言います。日経平均株価やTOPIX、NYダウ等の指数に連動する投資信託の一種ですが、証券会社に口座を開けば、株式のようにリアルタイムで取引を行うことができます。
つまり、先ほど説明した「株式」と「投資信託」の中間的位置に存在しており、少額から取引できる上に自分の好きなタイミングで売買できる投資信託といえます。
通常の投資信託は取引価格が1日1回決まるのに対し、ETFは証券取引所の取引時間中であれば時価で売買できるため、分散投資をしながら値動きを楽しみたいという方にはおすすめの運用方法です。
安全性
ETFの投資対象になっている指数は複数の銘柄によって構成されており、ETFを購入するだけで分散投資ができるので安全性は高いと言えるでしょう。
分散投資はリスクを回避するための手段であり、あらかじめ分散投資ができることはETFのメリットです。
期待リターン
ETFの期待利回りは2~5%程度です。日本株や外国債券のETFの利回りは2%程度で、REITや新興国債券だと5%前後の高利回りが期待できます。
ETFは、リスクを低く抑えながら比較的高い利回りが期待できるミドルリスク・ミドルリターンの金融商品だと言えるでしょう。
預入資金のハードル
ETFは、銘柄によっては1万円前後で購入することが可能です。1万円だと購入できる銘柄は限られますが、10万円程度の予算があれば選択肢が広がります。
購入時には手数料が必要になりますが、ネット証券によっては一定金額まで手数料を無料にしているところもあります。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、主に「私募投資信託」のことをいいます。
通常の投資信託は「公募投信(投資信託)」と言い、誰でも投資に参加できます。対してヘッジファンドは、購入可能価格が数千万円からと巨額であるため、富裕層や金融機関などの機関投資家しか参加できません。
「ヘッジ」とは「避ける」という意味であり、「リスクが起きそうならば回避し、別の場所で利益を追求する」という運用スタイルです。その投資対象は幅広く、金融市場だけでなく農産物先物などの商品市場に及ぶこともあります。
公募投信に比べて自由度が高く、よりリスクを抑えた運用ができることから、各資産の中でも”ローリスクハイリターン”を期待できる商品です。退職金のほとんどを運用に回せるなど、資金に余裕がある方におすすめしたい商品です。
安全性
ヘッジファンドは、プロのファンドマネージャーがあらゆる投資手法を使ってリスクを回避するため、安全性は中間くらいだと言えるでしょう。
それでも、一般的にハイリターンを狙える金融商品はリスクが高いですが、ヘッジファンドはリスクを抑えながらハイリターンが狙えます。
期待リターン
ヘッジファンドは、年率10%以上の高利回りを目指して運用しています。下落相場であっても収益の獲得が期待でき(絶対収益)、金融市場の状態に関係なく利益を追求できることがヘッジファンドのメリットです。
預入資金のハードル
ヘッジファンドは私募ファンドであり、最低でも1,000万円の資金が必要です。預入資金のハードルは高く、ヘッジファンドで資産運用ができる人は限られます。逆に退職金などまとまった資金がある場合は、ヘッジファンドで資産運用ができるチャンスです。
また退職金運用になぜヘッジファンドがおすすめなのか知りたい方は「退職金運用にヘッジファンドがおすすめな5つの理由!注意点や向いていない人の特徴も紹介!」もぜひ参考にしてください。
退職金を運用する上での注意点
次に、実際には退職金を運用する上での注意点を紹介します。
退職金をいくら運用すべきか、どのように運用すべきかは、保有資産や運用目的によっても異なるので、自分に合った運用を行うことが大切です。退職金を運用する上では、以下の3つが大切です。
余剰資金で行う
まず、退職金の運用は余剰資金で行いましょう。余剰資金とは、簡単に言えば「当分使う予定のないお金」です。日常生活費や医療介護費、子供の教育費など、使う予定が分かっているお金は、余剰資金とは言えません。
資金を運用にばかり回して日常生活に支障をきたすことがないよう、まずは余剰資金の計算をしておくことが大切です。
リスクが低い守りの運用をする
退職金の運用には、リスクの低い商品を選ぶことをおすすめします。退職後は現役時代のように、すぐに働いてお金を稼げるわけではありません。再雇用やアルバイトで働いたとしても、ほとんどの人が昔と同じような収入は見込めないでしょう。
そのため退職金の運用に失敗すると「損失額を働いて補填する」ようなことができません。退職金の運用はリスクをとって大きく稼ぐことを狙うのではなく、より堅実な「守りの運用」をするべきです。
分散投資をする
堅実に守りの運用をする上では、「分散投資」を行うことが基本です。「分散」とは主にリスクの分散のことを指しますが、投資対象(商品)の分散、時間の分散などにも同じことがいえます。これは、運用を行う上で大きなメリットとなります。
例えば、1つの商品にまとめて投資した場合と2つの商品に分散して投資した場合を比べてみてください。
2つの商品に分散投資していれば、仮にどちらかに損が出たとしても、もう一方に利益が出ればトータルで損をせずに済んだり、損失額が少なくて済む可能性があります。
これらの注意点を守らないと、退職金運用に失敗する可能性が高まります。退職金運用に失敗したときのリスクについて知りたい方は「退職金の運用で失敗しないための4つの方法!よくある失敗例とおすすめの相談先!」も参考にしてください。
https://hedgefund-direct.net/column-test/severance-pay-failure/
退職金の運用はプロに任せるのが安心!
ここまで見てきた通り、大切な老後資金を確保するためにも、退職金の運用は非常に重要な役割を果たします。「人生100年時代」や「老後2000万円問題」と聞いて、運用しなければと危機感を覚える人も増えてきています。
一方で、数千万円もの退職金をどんなものに投資したらいいのか、今後のライフプランを考えたときに実際にいくら必要になるのかなど悩む人も少なくありません。
そんな方は、ぜひヘッジファンドダイレクトにご相談ください。ヘッジファンドダイレクトでは、日本国内の金融商品では満足できない人向けに、投資目標やニーズに合致した優秀なヘッジファンドを提案しているので、大切な退職金の資産運用をサポートします。