2020年の株式市場は波乱の相場で、ヘッジファンド業界も苦戦を強いられました。3月には多くのファンドが暴落に巻き込まれ資金流出となってしまいましたが、最終的には約3.4兆ドルと過去最高水準の運用残高での幕引きとなりました。
2021年もヘッジファンドの運用残高は拡大するでしょう。その理由を3つ紹介します。
まず、2020年のヘッジファンド業界を振り返ってみましょう。
2020年のヘッジファンド業界
ヘッジファンドの運用資産残高は過去10年で1.4兆ドルから3.4兆ドルへと大幅に増加しましたが、これは資金流入よりもパフォーマンスが大きく寄与していました。
BarclayHedgeによると、直近3年間で約2,830億ドルの資金が流出し、過去10年間の資産流出入の合計はわずか+1,640億ドルだったようです。
2020年は年間を通じてボラティリティが高く、ヘッジファンド業界にとっては図らずもストレステストを行うような展開となりました。
振り返ってみると3月末までの下落幅を小幅にコントロールし、4月以降は継続的に好調な値動きを記録したファンドが多く、多くのヘッジファンドが投資家の期待に応える結果となりました。
あるヘッジファンドは、下記のような実績を残しました。
世界株式と比較して下落を最小限に抑えながら、安定的な運用を実現しています。
こういった株式市場との相関性が低いヘッジファンドや平均リターンが高いヘッジファンドは投資家からの信頼を高め、低金利による債券投資の減少と相まって2021年はヘッジファンドへの資金流入が加速しそうです。
ヘッジファンドに資金が集まる理由①:株式ロングショート戦略の復権
世界で初めてのヘッジファンドが取った戦略で最も長い歴史を持つ株式ロングショート戦略は根強い人気を誇り、最大でヘッジファンド運用資産の約40%に達したこともありました。
株式ロングショート戦略の解説はこちら↓
しかし近年ではインデックスへの巨大な資産流入によるS&P500の大幅高もあり、指数を下回る運用実績となった株式ロングショート戦略ヘッジファンドも見られるようになったことから、投資家は他の戦略で運用するヘッジファンドに資産を移すようになりました。
2020年10月末の株式ロングショート戦略ヘッジファンドの運用残高は約1,700億ドルでしたが、これはピーク時の25%程度の水準です。
インデックス投資が盛んになってから約10年が経ちますが、この10年はファンドマネージャーにとって銘柄選択が非常に難しい期間でした。PERやPBRといった指標から割安・割高を算出しても、関係なく米国株や大型ハイテク株に資金が流入していたためです。
S&P500指数と、米国株を除いた世界株式インデックスの値動きを比較してみます。
2010年ごろまではパフォーマンスに大きな差は見られませんでしたが、それ以降はS&P500のパフォーマンスが明らかに向上しています。その反面で価格の歪みも過去に無い水準で大きくなっているため、ファンドマネージャーがリターンを得られる機会も大幅に増加しているといえます。
割高・割安という観点から各資産を大まかに分類すると、下表のようになります。
割高 | 割安 |
米国株 | 非米国株 |
大型株 | 小型株 |
成長株 | 割安株 |
将来に起きることは誰にもわからないため割高・割安な状態が解消されるという保証はありませんが、ファンドマネージャーは様々な指標から投資対象を決定しており、価格の歪みが解消される機会を捉えてリターンを狙います。
全世界的に価格の歪みが拡がっており、ヘッジファンドは多くの収益機会が見込まれます。2021年は株式ロングショート戦略のヘッジファンドの復権と、運用資産の回帰に期待できそうです。
ヘッジファンドに資金が集まる理由②:ESG投資への対応
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮している企業を選別・重視して行う投資であるESG投資は、ここ数年で急激に拡大しました。投資家のニーズに応え、ESG情報に配慮するヘッジファンドが増加しています。
ESG投資を行わなければならない機関投資家も投資対象にできるヘッジファンドが増え、ヘッジファンドへの資金流入が見込まれます。
ヘッジファンドとESG投資について詳しくはこちらから↓
ヘッジファンドに資金が集まる理由③:手数料の低下
ヘッジファンドの手数料は「2-20」が平均と言われていました。かつては運用残高の2%を管理手数料、値上がり益の20%を成功報酬として定めるヘッジファンドが多かったためです。
※普通の投資信託よりも高額な手数料ですが、ヘッジファンドには優秀な実績を残しているものも多く存在します。投資対象を選定する時は手数料だけ見るのではなく、手数料控除後のリターンで比較することが重要です。
しかし、同じヘッジファンド間で比較する場合、手数料の高さはデメリットになります。そのため近年ではこの手数料は低下傾向にあるようです。
ユーリカヘッジによる2019年の調査で、最新のヘッジファンドのコスト体系が明らかになりました。
管理手数料については2%未満のファンドが増加し、中でも1.5%未満のコストで運用するファンドが過半数を占めています。投資戦略やファンドの規模によって手数料水準は異なりますが、同戦略の中で高い管理手数料を維持するためにはそれに見合う実績を残す必要があると言えそうです。
一方で成功報酬は20%超に設定しているファンドの残高が過半を占めています。
これはおそらく、成功報酬に関係なく手数料を差し引いた後のパフォーマンスで優れた実績を残すファンドマネージャーの下に多くの資金が集まっているからと考えられます。概ね「1.5-20」がヘッジファンドの手数料だといえます。
しかし、機関投資家に対してはより低い手数料で投資できるよう調整が行われます。投資金額のロットアップやロックアップの設定など釣り合うような条件を設定することが一般的ですが、推定では「1-15」程度と個人投資家に比べて大幅に良い条件で運用できるようです。
大口の機関投資家の資金はヘッジファンドにとっても重要なため、こうした手数料低下によるヘッジファンドへの資金流入は加速するでしょう。
まとめ
2021年はヘッジファンドにとって良好な市場環境のもと、ESGなど機関投資家のニーズに応えながら、コストを下げて良い条件で運用できるようにするといった複数の好条件が重なる年になりそうです。
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