バフェット氏は投資哲学を変えたのか?

投資の神様として名高いウォーレン・バフェット氏の動きが活発になってきました。コロナウイルスの影響で3月に航空株を全て売却して以降あまり目立った動きをしていませんでしたが、8月に入り銀行株から金鉱株への組み換えや日本の商社株への投資が報じられ、水面下での動きが徐々に明らかになっています。

バフェット氏は何を考えてこのような投資を行ったのか、最新のバークシャー・ハザウェイの報告書から紐解いていきます。

目次

バフェット氏は金融株を捨てたのか

最新の報告書(13F)によると、バフェット氏はゴールドマンサックスの株式を全て売却したようです。また、ウェルズファーゴやJPモルガン・チェースの残高も減らしています。

一見すると金融株の残高を削減しているようにも見えますが、そうではありません。銀行株を売却した資金はバンク・オブ・アメリカの残高に加えられたようです。

バンク・オブ・アメリカは銘柄別の保有残高でアップルに次ぐ2位を占め、ポートフォリオでの割合は10%程度に上ります。

また、バフェット氏は他の金融セクター株は保有し続けています。ビザ、マスターカード、アメリカン・エキスプレスなど、保有比率はかなり高くなっています。

金融・銀行株を捨てたわけではなく、同じセクターの中で銘柄を調整したという言い方が妥当ではないでしょうか?

◆バフェット氏の保有上位10銘柄

順位銘柄割合
1Apple Inc.50.02%
2Bank of America Corp10.73%
3Coca-Cola Co7.69%
4American Express Company6.14%
5Kraft Heinz Co4.51%
6Moody’s Corporation2.87%
7Wells Fargo & Co2.41%
8U.S. Bancorp2.20%
9Davita Inc1.32%
10Charter Communications Inc1.28%

バフェット氏は金投資を受け入れたのか

「アメリカ人の気質に合わない」「アフリカやそこらの地面を掘って、溶かして、別の穴を掘って、また埋めて、それを守っている」

バフェット氏は金投資に対してこのような発言を残しています。「金は新しい価値を産み出すものではない」として金投資を嫌っていたからこそ、今回の金鉱株組入れは大きな話題になりました。では、金鉱株への投資は金投資と同じなのでしょうか?

バリックゴールドは金を採掘する企業ですが、金投資と同じ意味にはなりません。

金だけでなく銅など他の鉱物も採掘しており、もちろん金や銅価格の影響は受けますが値動きの連動性は決して高くありません。

20年間の長期間で比較しました。値動きの相関を表す相関係数はバリックゴールドと金で0.26、バリックゴールドと銅で0.56となっています。

また、バリックゴールドという企業には、現金・配当・資産・バランスシートといった金自体にはない多くの特徴があります。金という現物への投資を毛嫌いするバフェットにとって、新しい価値を産み出すという意味では、今までの姿勢と変わらないのではないでしょうか?

しかし、金鉱株の株価は明らかに金価格に影響を受けます。「投資原則は変えずに、少なからず金投資をとりいれた」という表現が正確だと思われます。

しかし、バリックゴールドへの投資額は低い水準にとどまっています。先ほどの上位10銘柄と比較してみましょう。

順位銘柄割合
1Apple Inc.50.02%
2Bank of America Corp10.73%
3Coca-Cola Co7.69%
4American Express Company6.14%
5Kraft Heinz Co4.51%
6Moody’s Corporation2.87%
7Wells Fargo & Co2.41%
8U.S. Bancorp2.20%
9Davita Inc1.32%
10Charter Communications Inc1.28%
25Barrick Gold Corp0.24%

今後投資額を増やしていく可能性も考えられますが、現状を見ると本格的に上位銘柄にするという意思はまだ見えません。

バフェット氏が金投資を取り入れた理由

様々な考察がされていますが、バフェット氏が金投資を取り入れた理由は将来のインフレを予測しているのではないかという予想が有力です。

コロナウイルスに端を発する世界的な低金利環境は、しばらく変化の見込みがありません。米FRBは年間のインフレ率を2%超とすることを容認し、2022年末まではゼロ金利政策を維持することを発表しています。

世界の共通通貨である金を保有することにより、インフレが起きても資産価値を守ることができます。

バフェット氏の投資手法として最も有名な特徴は「割安株に長期投資を行う」点ですが、この原則は崩れていません。

金現物に投資した場合、金価格の上昇による恩恵は価格上昇分だけです。しかし、金鉱株では保有する金鉱山などの資産価値も高まるため、金価格の上昇分以上に値上がりする可能性があります。値動きが大きいため短期投資には向かない投資対象ですが、長期投資を前提として投資するなら面白い資産と考えられます。

おわりに

バフェット氏は2016年にアップル株に投資した時も、運用方針が変わったといわれました。その後の4年のアップル株の上昇を見ればその時の投資判断が正しかったかどうかは分かると思います。実はバフェット氏は85%をバリュー株投資の始祖であるグレアム氏の運用手法を、15%はアービン・フィッシャーという成長株投資の手法を参考にしていると述べており、バリュー株だけでなく成長株投資も含めてバフェット氏の投資哲学と言えます。

今回の金投資に関しても実は今までの投資哲学を大きく変わっていないと考えられます。金鉱山業界で1番のバリックゴールドに対し、将来性と割安感を評価した上で投資したのではないでしょうか。バフェット氏の投資により、金価格はもちろん、現在の金融緩和政策の行方とインフレ率に注目が集まります。

バフェット氏は1956年にバフェットアソシエイツというヘッジファンドを設立しています。ファンドマネージャーによって投資哲学や運用方法が大きく異なることがヘッジファンドの特徴です。

バフェット氏のような一流のファンドマネージャーに運用を任せてみたいという方は、是非ヘッジファンドダイレクトにご相談ください。

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