ヘッジファンドの様々な運用戦略を紹介していくシリーズ。今回は最先端のテクノロジーやデータを用いたシステム運用であるマネージド・フューチャーズ戦略をご紹介します。
マネージド・フューチャーズ戦略では、割安・割高などの投資判断にコンピューターを用いてシステマチックに運用を行います。相場のトレンドを見極め、それに基づいてロング・ショートポジションを構築するトレンドフォロー戦略が一般的です。
テクノロジーの進化や市場の多様化に伴い、多種多様なデータを用いての分析が可能になりました。近年のヘッジファンドに多く見られる戦略といえます。Man社のトレンドフォロー戦略ファンドなどが有名です。
あるマネージド・フューチャーズ戦略のヘッジファンドのパフォーマンスは下のようになります。約21年でS&P500指数の2倍以上値上がりしており、長期的に高いリターンを残しています。
次に、このようなパフォーマンスを上げることのできるマネージド・フューチャーズ戦略の運用方法について解説します。
運用方法
マネージド・フューチャーズ戦略の中で最もベーシックなトレンドフォローの運用手法は、下図のようなイメージになります。一言で表現すると「上がる資産を買い、下がる資産を売る」というイメージですね。
相場が上がるときはもちろん、下がるときでも利益を狙うことが可能な戦略です。トレンド(方向性)が出てからポジションを構築するため、トレンドの転換期や方向感のない相場では苦戦するという特徴があります。
ルール通りにシステム運用されるため、運用のルール作りがマネージド・フューチャーズ戦略の肝になります。テクノロジーの進化に伴い、過去に比べ多くのデータを利用することが可能になっています。例えば人工衛星を使って船を追跡したり、道路の交通状況を精査することで在庫状況を予測することもできるようです。
ヘッジファンドは、そういったデータをいかに投資判断のモデルに組み込むかによって他のファンドとの差別化を図っています。試行錯誤が繰り返される中で、新たな指標や相場判断の基準が誕生するかもしれません。
マネージド・フューチャーズ戦略の特徴
ここでは、マネージド・フューチャーズ戦略の特徴を簡単に3つご紹介します。
1.下落局面でも利益が狙える
方向性のある相場で利益を狙う戦略のため、暴落時にも方向性があればリターンを上げることが可能です。国際分散投資ではあらゆる資産が値下がりする時は資産を守ることができませんが、マネージド・フューチャーズ戦略のヘッジファンドであれば一定の効果が期待できます。
2.相場の転換期には弱い一面も
相場のトレンドに合わせてポジションを構築するため、トレンドが続く間は安定したリターンが期待できます。しかし、トレンドの転換期(下降トレンド→上昇トレンドなど)には一時的にマイナスになる傾向があります。
3.株式や債券と関係ない値動きをする
上記2つの特徴から、マネージド・フューチャーズ戦略のヘッジファンドの値動きは
◎株や債券が値下がりする相場でも利益を狙える
◎他の資産が値上がりする時にパフォーマンスが弱いことがある
基本的にこのようになり、他の資産の値動きと関連性が低いことが特徴です。
分散投資の基本は、値動きの異なる資産に投資することです。ポートフォリオにこの戦略のヘッジファンドを組入れることで、分散効果を高め運用を安定させる効果も期待できます。
マネージド・フューチャーズ戦略の現状
イーベストメント社の調査では、2020年7月末時点のマネージド・フューチャーズ戦略ヘッジファンドの運用残高は約940億ドルと全体のおよそ3%を占めています。ユーリカヘッジ・マネージドフューチャーズインデックスのパフォーマンスは、下記の通り安定した値動きを見せています。あらゆる資産が値下がりした3月にプラスのリターンを上げていることが特徴的です。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 年初来 |
0.56% | -0.79% | 1.09% | 0.42% | -0.17% | -0.64% | 3.03% | 3.49% |
同インデックスの長期チャートは、以下のようになっています。コンピューターとシステム運用を駆使することで、安定的な運用を行いながらS&P500指数を上回るパフォーマンスを残しています。
おわりに
システム運用を行うマネージド・フューチャーズ戦略は、売買を行うシステムをいかに構築するかで大きくファンドの個性が現れます。利用するデータや判断基準はもちろん、大きいトレンドを追いかけるファンドや小さいトレンドを追うファンドなど、同じ戦略でもタイプによって全く異なる値動きをすることが特徴的な戦略と言えます。
他資産と関係ない値動きをしてくれることから、分散投資効果を見込んで投資する投資家も多いようです。