近年の米国株式の高騰により、S&P500指数が注目を集めています。インデックス投資の機運も高まり、つみたてNISA等でS&P500指数に連動する投資を始められる方も増えているようです。
指数のデータは無料ですぐ手に入れることができますが、ヘッジファンドの情報は得にくいため、実態がわからないという方も多いのではないかと思います。今回は、具体的なファンドのデータを用いてS&P500指数とヘッジファンドを比較することでそれぞれの特徴を明らかにしていきます。
S&P500指数とは
米国株式市場の動向を表す指数で、時価総額をベースに500銘柄で構成されています。米国市場の70%以上をカバーし、市場全体の値動きを表す指標として幅広く利用されます。
S&P Dow Jones Indicesによると、S&P500指数に連動する商品の運用残高は3兆4千億ドル以上に及ぶようです。世界で最も有名な指数といっても過言ではありません。
S&P500指数のパフォーマンス・リスクリターン
&P500の長期チャートはこちらになります。1999年4月を100とし、2020年6月までのデータで指数化しています。
この期間ずっと保有し続けていれば、年率6.1%のリターンで最終的に約3.5倍になっていた計算です。リーマンショック時には50%近く値下がりしてしまいましたが、その後のチャートは順調そのもので現時点ではコロナショックの影響もほぼ回復しています。リスク(価格変動の大きさ)も高く、過去と比較したバリュエーションの高さも注意するべきですが、ここまでの成績は良好で人気が高いのも頷けます。
ヘッジファンドA
続いて比較対象のヘッジファンドAをご紹介します。ありとあらゆる資産を対象にトレンドフォロー戦略で運用され、ファンド業界で数多くの賞を受賞している米国の老舗ヘッジファンドです。今までの実績は下図のようになっています。
S&P500指数と比較して値動きは荒いですが、リターンも大きくなっています。これだけ長期に渡っての運用実績が年率10%以上を超えているのは、世界でも優秀なヘッジファンドである証です。
S&P500とヘッジファンドAの比較
いよいよS&P500指数とヘッジファンドAを比較していきます。まず比較チャートを見ますと、ヘッジファンドAがS&P500指数の約2.4倍の値上がりをしていることがわかります。値動きも大きいですが、それに見合うリターンを残しているといえるでしょう。
もう少し細かく見ていきましょう。年次別のリターンを比較してみます。違いをわかりやすくするために、S&P500指数がマイナスのリターンの年とコロナショックの影響が最も現れた2020年3月のパフォーマンスを比較しました。
ドットコムバブルの崩壊、リーマンショック、米中貿易摩擦など様々な株価下落局面がありましたが、このヘッジファンドAはほとんどの場面で値上がりしてくれていることがわかります。もちろん常に値上がりしているわけではないのですが、株価下落に巻き込まれにくい特徴があるといえます。
とはいえ、チャートの通りS&P500指数と逆方向に動いているわけでもありません。株式を保有されている方は、このヘッジファンドAも保有することで運用のバランスが良くなることが期待できます。
インデックス運用を上回るための「アルファ」
最後に、ヘッジファンドが運用におけるパフォーマンス要因であるアルファ(α)とベータ(β)についてご紹介します。
銘柄の値動きの要因は、
①市場全体の値動きに連動する部分
②市場に左右されない、銘柄独自の価値の部分
この2種類に分解できますが、このうち①をベータ、②をアルファと呼びます。市場の値動きを表すS&P500指数はベータ値が1、アルファ値が0ということになります。ヘッジファンドは、ファンドマネジャーの運用能力によってこのアルファ値を追求することで相場の上下に関係なく絶対収益を追い求めることが可能になるのです。
市場のリターンを上回るためには、如何にしてアルファを生み出すかを考える必要があるのです。ヘッジファンドに投資する際は、アルファを見ることで運用能力の優れたファンドを選ぶことができます。
おわりに
ヘッジファンドAとS&P500指数を比較しました。今回ご紹介したファンドはS&P500指数を上回るパフォーマンスでしたが、常に勝っていたわけではありません。投資を開始する時期や評価のタイミングによっては、S&P500指数が優れたパフォーマンスを残している時もあります。
アルファを追求するヘッジファンドに投資することで相場の値動きに関係なくリターンを狙うことはできますが、ベータも取り逃がさないという意味ではインデックス投資のメリットはあります。自分の資産と相性の良いファンドで分散投資を行うことで安定した運用ができるのではないでしょうか。