分散投資の意外な落とし穴とは?

リスクヘッジしながら効率のよい運用を行うために、自分に合ったポートフォリオを構築することは不可欠と言われています。

値動きの異なる複数の資産に投資することで安定的な運用が期待できますが、ただ分散するだけでは不十分です。分散投資でよく陥る落とし穴や、考え方について解説します。

目次

分散投資の効果

まずは、分散投資の効果を見ていきましょう。日経平均、NYダウ、金、国内REITに25%ずつ投資する下記のようなポートフォリオで投資した例を考えます。

日経平均と比較すると、安定した値動きでの運用が行われています。実際に計算すると平均リターンは高く、平均リスクは低くなっているため、分散投資の効果が表れているといえます。

2003年4月~2020年10月

今回はわかりやすい例として4資産に25%ずつ投資するポートフォリオで計算しましたが、運用の目標によって組入れ資産や割合は異なります。一般的には、安定的な運用を目指すなら債券の割合を高く、積極的な運用を行うなら株式の割合を高くするようなポートフォリオになります。

分散投資の落とし穴

自分に合うポートフォリオで分散投資を行うことで安定的な運用を期待することができますが、そこには落とし穴も存在します。見落としがちなリスクを2つ解説します。

①値動きの似た資産に分散投資をしても、リスクは軽減しない

分散投資は、値動きの異なる資産に分散するからこそ効果を発揮します。

上記の例では日経平均とNYダウの値動きは似通っていますが、値動きの異なる金を組入れることで分散投資の効果を確保できています。

「どれくらい値動きが似ているか」は、相関係数という尺度で測ることができます。

-1から1までの範囲で表され、1に近いほど値動きが似ていて-1に近いほど逆方向の値動きをするという意味になります。

先に例として挙げたポートフォリオでは、4資産の相関関係はこのようになっています。

相関係数を比較すると、金が他資産と異なる値動きをしていることが明らかになります。

金以外の3資産の相関はかなり高く、もし金を組入れていなかったら分散効果は非常に低かったでしょう。

このように、分散投資のポートフォリオを考える際は資産間の相関関係をチェックする必要があります。

②相場の暴落局面では、伝統的資産への分散投資は意味をなさない

長期の分析では金を組入れることで運用の効率を高めることができましたが、相場の暴落時にはこの分散効果が薄くなってしまいます。リーマンショックの起きた2008年の1~12月での各資産の相関係数は、下記の通りです。

株式やリートだけでなく、金の相関係数も軒並み高まっています。

こういった暴落局面ではリスク資産から一斉に資金が逃げる傾向があるため、ロング(買い持ち)中心の運用ではどれだけ分散しようとも下落は免れません。

「資産を分散させることで、安定的な運用ができる」と思い込んでいると、このような暴落時に泣きを見ることになってしまいます。

ポートフォリオに組み入れるべき資産クラスとは

他の資産と相関性の低い資産を組み合わせることが、分散投資を行う上で重要なポイントになります。グローバル化によって株式は国を問わず相関性が高まり、現在の低金利環境では債券価格も株式と似たような値動きをするようになっています。

伝統的資産の相関性が高まる中で、分散投資先としてヘッジファンドやプライベートエクイティといったオルタナティブ資産が注目されています。

世界で初めて証券取引所が設立されたのは1792年、債券の起源は17世紀ごろと言われており、長い期間に渡り取引が行われています。一方オルタナティブ資産の歴史は短く、ヘッジファンドは1949年にアルフレッド・ジョーンズ氏が立ち上げたものが世界初のヘッジファンドと言われています。

こういったオルタナティブ資産は株や債券と異なる値動きをする特徴があり、機関投資家の運用に多く活用されています。

ハーバード大学基金のポートフォリオは、2020年6月末時点で下記のようになっています。

オルタナティブ資産のプライベートエクイティとヘッジファンドの合計で59%を占める、分散投資効果の高いポートフォリオです。

ハーバード大学基金運用レポートより作成

オルタナティブ資産にも様々な種類がありますが、個人投資家が投資可能な資産はそれほど多くありません。プライベートエクイティは数億円~数十億円が最低投資金額となっており、個人投資家の資金を受け付けないところも多いようです。

比較的手軽に投資できるオルタナティブ資産として、ヘッジファンドがおすすめです。最低でも2,000万円程度の資産がある投資家向けになりますが、投資助言会社が世界トップクラスのヘッジファンドへの投資をサポートしてくれます。

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