【2020年】ヘッジファンド戦略別リターンランキング

相場の上下に関係なく、絶対リターンを追求するヘッジファンド。世界トップクラスのファンドでは、安定して年間10%以上のリターンを10年以上の実績として記録しています。

日本の投資信託と比較して優秀な成績を残しているヘッジファンドは多く、個人でも自分のポートフォリオに追加する投資家が増加しています。

ヘッジファンドの投資戦略や運用方法はファンドによって大きく異なり、様々な特徴が存在します。

今年はコロナショックにより大荒れの相場となりましたが、ヘッジファンドはどんな値動きで推移していたでしょうか。10月までの実績を戦略別に振り返っていきます。

データは世界トップクラスのヘッジファンドだけでなく、1900以上のヘッジファンドを対象にしているバークレイヘッジインデックスを利用しました。

目次

戦略別リターンランキングTOP5

順位戦略名リターン
1位テクノロジー・ヘッジファンド+16.51%
2位ボラティリティ・トレーディング+12.39%
3位アジア株式ヘッジファンド+11.34%
4位ヘルスケア&バイオテクノロジーヘッジファンド+8.61%
5位債券リラティブバリュー+8.53%
バークレイヘッジ・インデックスより作成

1,3,4位には、投資対象をかなり限定して運用するヘッジファンドがランクインしました。業種別ではコロナショックによる悪影響が少なかったテクノロジーとヘルスケアセクター、地域別では回復が早かった中国を含むアジア株式に投資するヘッジファンドがいずれも好成績を残しています。

2位のボラティリティ・トレーディングは、相場のボラティリティ(価格変動)を利用するファンドです。上記のファンドは株価の値動きにより成績が左右されますが、ボラティリティ・トレーディングの場合は「相場が荒れるか安定するか」を予測する運用です。

ボラティリティの指標としてVIX指数が有名で、2020年の推移は以下のようになっています。

※2020年1月~10月末

株価指数と逆方向に動きやすい傾向があり、3月の暴落時には一時82.6という値を付け、リーマンショック時に匹敵する高さとなりました。相場は大荒れでしたが、「相場が荒れる」方向に賭けていたヘッジファンドは高いリターンを記録しました。

2004年に設立され約9億ドルの資産を運用するヘッジファンド「ドミニセ」は、3月のみで20%以上のリターンを上げたという記事をhedgeweekが報じています。

5位には債券リラティブバリュー戦略がランクインしました。

債券の適正価格を見抜き、保有することで得られるインカムゲインではなく債券を売買することでキャピタルゲインを狙うこの戦略を用いるヘッジファンドにとっては、今年の相場は大きな収益機会がありました。

コロナウイルスの拡大に伴う経済活動の停止によりあらゆる資産の現金化が進み、株式だけでなく債券も値下がりしました。

しかしFRBやECBといった中央銀行の対応は速く、社債の買い入れ等を含む金融緩和政策を次々と打ち出しました。結果としてデフォルトも最低限に抑えられ、債券価格は回復に向かいました。3月の下落を小幅にとどめ、その後素早く回復した戦略といえます。

ヘッジファンド独自の戦略のパフォーマンス

当コラム戦略記事で解説しているようなヘッジファンドならではの投資戦略は、どのような結果を残しているのでしょうか。5つピックアップして紹介します。

①株式ロング・ショート戦略 +0.89%

ショートポジションを構築することで下落相場でもリターンを狙うことができる戦略です。今年に入り10%超のリターンを残しているファンドもありますが、ヘッジファンドによりロング・ショートのバランスや投資判断は異なります。全体ではロング重視のファンドが多いため、指数でみると株式との相関が高い場面も出てきます。3月の暴落に巻き込まれたものの、年初来リターンはプラスに転換しています。

1月2月3月4月5月
-0.67%-2.21%-6.04%4.58%1.65%
6月7月8月9月10月
0.90%1.81%2.12%-0.82%-0.06%

②グローバルマクロ戦略 +4.39%

世界中の資産を対象に、マクロ経済の動きを予測しながらダイナミックな運用を行う戦略です。レイ・ダリオの率いるブリッジウォーターのピュアアルファⅡファンドなど大手の有名ファンドが多く、メディアにも多く取り上げられる戦略です。3月は小幅に下落しましたが、その後すぐに値上がりし安定した値動きを見せています。

1月2月3月4月5月
0.42%-1.26%-3.24%3.47%1.52%
6月7月8月9月10月
0.66%3.56%1.40%-1.09%-0.92%

③ディストレスト証券戦略 +4.83%

破綻寸前の企業に投資し企業価値の再生からリターンを得るディストレスト証券戦略は、3月こそ7%超の下落となったものの世界的な金融緩和政策を追い風に、あっという間に年初来リターンをプラスに転換させています。

1月2月3月4月5月
-1.09%1.10%-7.42%2.70%2.12%
6月7月8月9月10月
5.39%0.16%1.28%1.24%-0.25%

④イベントドリブン戦略 +0.89%

買収や合併といった企業固有のイベントを収益機会とするイベントドリブン戦略にとって、企業が一斉に現金の確保に走りイベントの激減した3月は苦しい時期となりました。年初から3月末までの下落率は15%にもなってしまいましたが、その後は経済活動やイベントの回復により値動きを回復しています。

1月2月3月4月5月
0.08%-2.60%-13.09%6.30%3.38%
6月7月8月9月10月
2.35%1.66%3.05%0.23%0.83%

⑤転換社債アービトラージ戦略 +7.79%

株式や債券の例に漏れず、転換社債価格も今年に入り大きく下落する場面がありました。債券と株式の性格を併せ持つことから価格はすぐに持ち直し、力強い値動きを示しています。債券としての特徴を持っていることから小幅の下落に抑えられ、素早い値上がりに繋がっています。

1月2月3月4月5月
0.57%1.28%-6.97%2.78%1.38%
6月7月8月9月10月
2.60%2.88%2.21%0.62%0.56%

おわりに

どれだけ優秀なファンドマネージャーでも、将来の出来事を全て予測することはできません。相場に関係なく絶対収益を追求するしても、想定外の出来事により期待通りの成果をあげられないことも当然あります。

今回コロナショックに対する値動きや回復のスピードなどを戦略別に振り返ることで、それぞれの戦略が相場の暴落時にどのように動くかをある程度予測できるようになりました。

もちろんヘッジファンド毎に特徴は異なり、同じ戦略でもそのパフォーマンスは全く異なります。

相場の暴落に備えるためにヘッジファンドをポートフォリオに組み込む投資家が増えてきていますが、投資するファンドのリスクや特徴を把握しておくことで自分のイメージと近い運用ができるのではないでしょうか。

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