外貨建て保険で苦情が殺到している?
外貨建て保険商品への苦情が、年々増加しています。
生命保険協会によると、2019年の外貨建て保険に対する苦情は前年比で110%と増加しており、国民生活センターに相談に来る方のうち半数近くが70歳を超える高齢者となっています。
年度 | クレーム件数 |
---|---|
2014年 | 922件 |
2015年 | 1,239件 |
2016年 | 1,665件 |
2017年 | 1,888件 |
2018年 | 2,543件 |
2019年 | 2,822件 |
高齢者がターゲットにされてしまう主な原因として、銀行の窓口でよく内容が分からないまま契約してしまうケースが多いことが挙げられます。
具体的には、定期預金や普通預金に預けていた高齢者に対し、このままでは低金利だからと金利の高い外貨建て保険の購入を勧める際に、銀行員の説明に不十分な点が多くあるようです。
金融庁の調査によると、銀行窓口での外貨建て保険の販売額は、2016年から2018年にかけて大手銀行では30%、地方銀行では80%以上増加しています。
外貨建て保険は、保険料の払い込みから保険金の支払いまで、すべて外貨建てで行われます。また、保険期間中も複雑な仕組みで運用しているため、すべてを説明し理解してもらうためには、1日では不十分であるほど難しい内容なのです。
外貨建て保険でよくあるトラブル
それでは、外貨建て保険でよくあるトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。よくわからないまま契約して損をしてしまうことがないよう、以下で具体的な事例を見ていきましょう。
為替変動リスクに対する説明が不十分
外貨建て保険でよくあるトラブルに、営業マンの為替変動リスクに対する不十分であるケースがあります。為替変動リスクとは、保険の満期日の為替が購入日より「円高」になっている場合、損をするというリスクがあることを指します。
例えば、日本円で米ドル建ての商品を購入した際、1ドル=100円だったとします。しかし、満期日(換金時)に1ドル=90円だった場合どうなるでしょうか。
1,000円を支払って10ドル分購入し、いざ満期を迎えて換金するとしても、その金額が900円分になってしまいます。このような為替の変動によって、思っていたよりも少ない金額しか換金されないというリスクなのです。
この為替の仕組みは難しく、一度の説明ではなかなか理解できない方も多いため、銀行員の説明を理解できるまで聞くことが大切になります。
手数料の負担が高すぎる
外貨建て保険商品は、他の投資型商品に比べて手数料が高い商品です。なかでも購入時の販売手数料は、円建て保険や投資信託に比べて圧倒的に高いです。具体的な手数料は、投資信託では1.1%~3.3%であるのに対し、外貨建て保険では6~8%程度です。
逆に言えば、銀行側としては最も利益を得ることができるため、一番売りたい商品ということです。
そしてこの販売手数料は購入時に差し引かれるため、そのぶん払込保険料が少なくなります。さらには中途解約した場合には元本を大きく下回ったり、中には解約時に解約手数料がかかる商品もあります。
このように外貨建て保険は投資信託と比べて手数料が高く、大きく資金が目減りしてしまうことがあります。
保険でなく預金と勘違いする
国民センターに相談に来る人の中には、外貨建て保険を預金の一種と勘違いして契約してしまっている方もいます。保険商品は「積立利率」という利率で運用していますが、これを預金の「利子」と混同してしまうような説明をする銀行員が非常に多いのです。
保険料は、純保険料(将来の保険金の支払い分)と付加保険料(保険会社の経費等)に分けられ、積立利率は純保険料にだけ適用されます。
一方で預金の利子は預金額全額に適用されるため、利子がつく金額自体が違うにもかかわらず「預金の利子に比べて・・・」などと説明するのはそもそも見当違いということになります。
さらに、先ほど説明した販売手数料などの手数料がかかるため、実際の利回りは提示されるような積立利率では計算できません。このように、外貨建て保険は預金とは全く異なる商品なのです。
元本保証と進められたが元本割れした
外貨建て保険を元本保証だと勘違いするような説明をする銀行員も多く、それがトラブルに発展する場合もあります。外貨建て保険は、先ほど説明した為替リスクや中途解約のリスクがあるため、元本保証とは程遠い商品です。
しかし、銀行で入ったものだからという安心感から、説明を疑問に思わないまま預金と同じ感覚で加入してしまう方が多いです。
たしかに長期で運用する前提であれば、積立利率のおかげで運用益が出るため、手数料のぶんを取り返して元本よりも増やすことが期待できます。
しかし積立利率があることを考慮しても、為替が大幅に変動してしまうと為替損失の方が大きくなる場合もあるため、その際は元本割れになってしまいます。
認知レベルが低い高齢者がターゲットにされる
このような外貨建て保険に関するトラブルは、70歳を超える高齢者に多いと冒頭でお話しました。つまり、高齢者は「売りやすい」存在になっているということです。
外貨建て保険の難しい内容を、数時間で理解できる高齢者はほとんどいないと考えられます。これまでずっと普通預金や定期預金に預けていて、まともに資産運用したことがない人であれば、聞いたこともない言葉がたくさん出てくるでしょう。
しかし積立利率の高さにばかり目が行ってしまい、為替リスクや中途解約時の注意点などについて十分に理解せず、商品の内容がわからないままなんとなく契約してしまう高齢者が多いのが現状です。
外貨建て保険の危険性は正しく理解しておこう
外貨建て保険を勧められたら、その危険性について正しく理解したうえで投資すべきか考えるようにしましょう。
近年は銀行の低金利状態が続いており、銀行員のノルマも厳しくなっています。そのため、売ることばかり考えている営業マンは、メリットはたくさん説明してもデメリットをあまり説明しないことがあります。
銀行員の勧められるがままに購入して、資産を大きく減らしてしまうことがないよう、時間をかけて検討することが大切です。
外貨建て保険のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、「外貨建て保険とは?種類や主な運用通貨、メリットやデメリットをわかりやすく解説!」を参考にしてください。
https://hedgefund-direct.net/column-test/foreign-currency-insurance/
外貨建て保険での資産運用を考えている方は?
ここまで見てきた通り、外貨建て保険を購入してトラブルに巻き込まれる方は少なくありません。為替や手数料形態、商品の特性などを十分に把握せずに購入すると、思わぬ結果を生んでしまうことがあります。
「外貨建て保険に興味はあるけれど、商品のことをよくわからずに購入するのは怖いな」と考えている人も少なくありません。
退職金の運用などで外貨建て保険などを勧められている方は、ぜひ投資助言会社である当社にご相談ください。中立的な立場から富裕層向けの運用手法をご案内いたします。